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呼吸器外科の主な病気

気胸

「肺のパンクはいつ,誰にでもおこります。」気胸ホットラインは24時間,365日つながります。

慶應義塾大学病院呼吸器外科では、2016年10月より『気胸ホットライン』を開設いたしました。
ホットラインでは当院呼吸器外科医師が24時間体制で医療機関・患者さん本人からの連絡に対して直接対応いたします。

概要

気胸嚢胞性疾患手術件数

気胸嚢胞性疾患手術件数

友人が気胸で入院しました。気胸ってどんな病気ですか。教えてください。

気胸は何らかの原因によって肺から空気が漏れて、肺がしぼんでしまう病気です。

肺から漏れた空気によって圧排された肺と健常な肺

原因は何ですか?

明らかな原因がなく起こる気胸を自然気胸といいます。自然気胸は20歳前後に多く、その次には60歳代によく起きます。
若い患者さんの特徴は、男性・長身・やせ型です。体質的に肺の表面を覆っている胸膜が弱いため発症すると考えられています。一方で高齢の患者さんの場合は喫煙者で栄養状態の良くない方に多く起きます。高齢の方は肺の状態が元来良くないために、治療に時間がかかったり、治療後に気胸が再発することも少なくありません。

肺から漏れた空気によって圧排された肺と健常な肺

(左画像):右肺に肺嚢胞(ブラ)を認めます。
(右画像):喫煙により、両肺の気腫化を認めます。

病院で気胸と診断されました。若い男性に多いと聞いていたのですが…

女性の自然気胸では、月経周期に一致して気胸が起こる「月経随伴性気胸」という気胸もあります。子宮内膜が胸膜にでき、月経に合わせて気胸を起こす病気です。気胸の程度や再発の回数などにより、治療法を選択します。稀な病気の肺脈管筋腫症(LAM)に伴うものがあります。元の病気の治療も難しいため、気胸に対しては癒着療法などが行われることが多くなります。

症状

よく気胸体型だといわれます。たまに苦しいような気がするのですが、
気胸になったらどんな症状が出ますか?

突然現れる胸の痛み、息苦しさ、咳などです。症状の強さは肺がしぼんでいる程度や、患者さんにより様々です。

診断

気胸と診断されましたがあまり自覚症状がありません。
入院を勧められましたが、治療しないとどうなりますか?

X線写真での肺のしぼみ具合により、気胸の程度を次のように分類します。
軽度気胸:肺尖部(肺の一番上の部分)が鎖骨の高さよりも上にある状態。
中等度気胸:肺尖部が鎖骨よりも低い状態。軽度と高度の中間程度。
高度気胸:肺が完全にしぼんでしまっている、あるいはそれに近い状態。
程度や症状により治療法を考えますが、軽度なものから徐々に進行し、
「緊張性気胸」という重症な状態になることがあります。このため一見大丈夫な方でも入院を勧められることがあります。

レントゲン写真

(レントゲン写真):左肺が完全にしぼんでおり高度気胸の状態です。

治療

友人が気胸で手術をしました。別の友人は何もしなかったそうですが、
どんな治療法がありますか?

気胸の治療はその重症度や経過により以下のような治療方法があります。

  1. 安静にして様子を見る
  2. 針で空気を抜く(脱気)
  3. 胸にチューブを入れる(胸腔ドレーンの留置)
  4. 手術

軽度の場合は、外来通院で経過観察することが可能です。中等度~高度の場合は、胸腔ドレナージが必要となります。
胸腔ドレナージとは、局所麻酔下に胸の中にドレーンという直径6~7mmの管を入れて、溜まった空気を体の外に出す治療です。しぼんだ肺を膨らませて、穴が自然にふさがるのを待ちます。しかし、空気漏れの原因となった部分に再び穴があくことも多く、再発率は30~50%といわれています。そこで、空気漏れがなかなか止まらない場合、自然気胸が2回以上再発している場合、また気胸の再発をなるべく避けたい場合には、手術を選択することになります。

レントゲン写真

左図:レントゲンで高度気胸を認め胸腔ドレーンを挿入しています。
   ドレーン挿入後肺の拡張が得られました。

今度気胸が再発したら手術をしましょうといわれています。
手術ってどんな感じですか?

気胸の手術では、全身麻酔下に気胸の原因となっている穴をふさぎます。穴のふさぎ方は、自動縫合器という機械で穴があいたブラをまるごと切除する方法をとることが多いですが、穴の周囲の肺組織を糸でしばってふさぐ方法もあります。近年はほとんどの手術を胸腔鏡下に行っていますが、原因となるブラの場所が分かりにくい場合には開胸手術に移行することもあります。再発の可能性が高いと考えられる場合には、肺の表面を補強するシートを貼るなどの予防処置を追加します。手術後は若い患者さんであれば2~3日で退院できます。
胸腔鏡下に自動縫合器を用いてブラを切除します。

(胸腔内写真):自動縫合器によるブラの切除。

レントゲン写真

(左 創部のシェーマ):胸腔鏡下手術は主に3箇所の小さい創部で行います。
(右 手術中の写真):胸腔鏡で撮影した画像をモニターで見ながら手術を行います。

手術はなるべく受けたくないのですが、手術以外の方法はありませんか?

通常の体力があり、若い方には手術をおすすめしています。持病などにより全身の状態が良くないため、全身麻酔がかけられない患者さんには、胸膜癒着療法という治療を選択する事があります。 薬剤を、ドレーンを通して胸の中に入れ、強い炎症によって肺と胸壁をくっつけて穴をふさぐ治療方法です。

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