縦隔は、左右の肺に挟まれた空間で、心臓、大血管、気管気管支、食道、胸腺などの臓器が存在する場所を指します。
縦隔内に生じる腫瘍を、一般に縦隔腫瘍と呼びます。
縦隔の上の方には神経やリンパ組織が、前の方には胸腺やリンパ節が、中の方には気管支や心膜が、後ろの方には神経や食道があります。
縦隔内に存在する様々な臓器から腫瘍が生じます。縦隔にある臓器から発生した腫瘍をまとめて縦隔腫瘍といいます。
性質もさまざまで、いろいろな病気を含んでいます。胸腺に腫瘍ができれば「胸腺腫」や「胸腺癌」、嚢胞ができれば「胸腺嚢胞」、となります。
集計では、縦隔腫瘍の中で最も多いものは胸腺腫で、およそ40%を占めます。神経原性腫瘍(約15%)、先天性嚢胞(約15%)、胚細胞性腫瘍(約10%)がこれに続きます。当科での縦隔腫瘍手術症例の内訳を示します。
縦隔腫瘍は悪性のものと良性のものがあります。
胸腺嚢胞、気管支嚢胞、心膜嚢胞などの嚢胞性病変は、良性疾患です。
縦隔腫瘍は約半数が無症状で、健診や他疾患の検査中に偶然発見されることも珍しくありません。症状がある場合は、腫瘍による周囲臓器の圧迫・浸潤による症状が主で、咳、息苦しさ、上大静脈の閉塞によるむくみや、声のかすれ、交感神経障害症状(まぶたの低下、瞳孔の縮小、発汗の異常)などが出ることがあります。
胸腺腫が疑われる方の約20-30%に重症筋無力症が合併することがあります。症状は、手足の力の入りにくさ、まぶたの低下、目のかすみ、食べ物の飲み込みにくさなどです。胸腺の免疫に関与して症状が出ます。胸腺腫を伴う重症筋無力症では胸腺摘出術を行います。胸腺腫がない方でも胸腺摘出手術が症状を改善させることもあり、重症筋無力症の治療として胸腺摘出術を行うこともあります。
縦隔腫瘍は様々な臓器から発生する腫瘍のため、確定診断をつけるには腫瘍組織を顕微鏡で見る必要があります。
CT、MRI、PET-CT検査は、腫瘍の正確な位置や性質、周囲臓器への浸潤の有無などを評価するために行います。
腫瘍によっては、発生しやすい性別や年齢に明確な傾向のあるものがあり、これらの情報も診断には重要です。
診断のために組織を採取することを生検と言い、CTで透視しながら針で組織を採取する方法などがあります。しかし、画像検査で悪性腫瘍が疑われる場合や、腫瘍が増大してきている場合、また、生検をするのが難しい場所に腫瘍がある場合などは、診断と治療を兼ねて腫瘍を切除する手術が勧められます。
縦隔腫瘍に対する手術は、胸部に小さい傷を作って内視鏡下に操作する胸腔鏡手術が多く行われています。
しかし、傷の位置や大きさは、腫瘍の場所やサイズ、周囲との関係で決まります。胸骨という胸の真ん中にある骨を中央で切って手術を行う方法もあります。
各種検査でどんな病気か、ある程度絞り込みます。おおよそ以下のような治療をお勧めしています。