慶應義塾大学病院呼吸器外科では、「安全で確実な外科治療を、より低侵襲に」を基本方針としています。
肺癌に対する肺葉切除や多くの症例で、小開胸手術に加えて胸腔鏡手術、ロボット支援下手術を導入し、従来の開胸手術に比べて体への負担を大幅に軽減しています。
また当院は、各分野の専門家が揃っており、ご高齢や持病をお持ちの方も安心して手術に臨めます。
ロボット手術による創部
手術支援ロボット
肺にできる癌を肺癌といいます。肺は呼吸器系の重要な臓器で、胸の中に左右2つあります。肺の役割は体の中に空気中の酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出する呼吸が主です。肺に存在する細胞が無秩序に分裂する状態なった状態が肺癌です。まわりの組織を侵略し破壊する浸潤、遠く離れた臓器に飛んでいき、そこでさらに癌を増殖させることを転移と呼びます。肺癌は進行すると浸潤や転移をします。日本人のがんによる死亡者数の中で、肺癌はがん死因の第1位で、男女別では男性で第1位、女性では第2位となっています。
非小細胞肺癌と小細胞肺癌に分類できます。それぞれで治療方針がことなります。
肺癌のうち、80%を占める非小細胞肺癌では、肺癌の広がりによって治療法を選択します。肺癌の広がりが限局されている病期においては、手術による切除が第一選択となります。小細胞肺癌は、非小細胞肺癌に比べ、悪性度の高い腫瘍であるものの、抗癌剤や放射線照射に対する感受性が高く、化学療法が治療の中心となります。以下に非小細胞肺癌の治療法をまとめます。
臨床病期(ステージ) | 治療方法 |
---|---|
Ⅰ | 手術→化学療法(ⅠA期は手術単独) |
Ⅱ | 手術→化学療法 |
Ⅲ | 手術→化学療法 化学療法→手術 化学療法+放射線療法 |
Ⅳ | 化学療法、分子標的治療 |
再発例 | 化学療法、分子標的治療、放射線療法 |
肺癌は病巣の広がり具合で病気の進行をⅠ期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期の「病期」に分類します。病期は「ステージ」とも呼ばれます。代表的な状態を下の図にしめします。
大変ご心配なこととお察しいたします。ステージ1(Ⅰ期)の肺癌は肺の中に癌がとどまっている状態で、手術により切除することをおすすめします。なるべく早く外来にお越し下さい。
肺癌を根治するには、肺癌のできている肺を肺葉以上の範囲で切除する必要があります。
一般的な肺癌の病巣のみを切除する楔状切除では局所再発をおこす可能性が高く、不十分だからです。当科では、4-7cmの小さな傷に胸腔鏡を併用し た胸腔鏡補助下手術を中心に、1cmの小さな傷4か所と約4cmの傷で施行可能なロボット支援下手術、4cmの傷1つで行う単孔式胸腔鏡手術を行っています。手術時間は2-3時間で、出血量も少なくすみます。術後は5日ほどで退院できます。当科は日本でも有数の肺癌の手術数であり執刀医の経験も豊富です。併存疾患があっても内科と協力し積極的な治療をおこなっています。
肺癌の標準根治手術は数ある外科治療のなかでもほぼ完成されているといって良い治療法です。手術によるトラブルが起こる確率は患者さんの年齢や体力によっても違ってきます。ご高齢, 糖尿病、心臓病などをもっている場合はリスクは少し高くなります。しかしながら術後の手術関連死亡率は0.3%以下と報告され、一般的には小さいですので、むやみに心配する必要は無いと考えてください。
ご心配な事と思います。経過を見て良い場合もありますので早めの外来受診をお勧めします。
検査の目的は以下の3種類があります。
胸部CT
PET-CT