漏斗胸外来担当 政井恭兵
『漏斗胸といわれたけど、何科にかかればいいかわかりません。』
『近くの病院では診察できないといわれました・・・』
『子供の胸が凹んでいるように見えます。これって漏斗胸でしょうか。』
漏斗胸に関する悩みにお答えするため、慶應義塾大学呼吸器外科では漏斗胸専門外来を開設いたしました。
漏斗胸の診察は病院により、呼吸器外科、小児外科、形成外科などいろいろな科で行われています。
しかし、治療を行っている病院は少なく、多くの方が受診の機会を逃しています。
当科では漏斗胸でお悩みの患者さん、ご家族にわかりやすい説明を心がけています。
また、当院では小児外科、心臓外科、麻酔科、形成外科、精神神経科と協力して、最適な治療を行います。
漏斗胸に関してお悩みの方は、ぜひ当院漏斗胸外来の受診をおすすめします。
漏斗胸は胸骨の一部が陥没している病気をいい、肋軟骨の変形が原因と考えられています。凹みの程度は人それぞれで違いがあります。 深く凹んでいる人もいますし、軽い凹みの人もいます。 凹みは左右対称の人だけでなく、左右の形が違う非対称性の陥凹の人もいます。発症のしかたにも個人差があります。乳児期から凹みが目立つ方もいれば、成長とともに凹みが目立つようになる方もいます。漏斗胸は、約1000人に1人程度の割合で起こるとされています。また家族内での発生もみられ、遺伝的な要素もあるといわれています。
陥凹の程度には個人差があり、陥凹の部位も胸骨全体の人や下部に限局する人など様々です。
陥凹の評価にはCTを用います。CT検査で、心臓の偏移や血管の圧迫などが客観的に評価できます。
幼児期では目立った症状はないことが多いとされます。陥凹の程度によっては気管支の狭窄が起こり風邪をひくと長引いたり、喘息に似た症状がでることがあります。他には、食べ物の通りが悪くなり、食後に吐くなどの症状もあります。思春期以降、成人では胸痛、動悸、労作時の呼吸苦などの症状が特徴的です。成人では半分以上の方にこれら何らかの自覚症状があるとされます。また学童期、思春期にみられる『心』の問題も漏斗胸患者さんにとって大きな問題です。
慶應呼吸器外科では成人患者さんを中心にNuss法(ナス法)を積極的に行っています。Nuss法は1998年米国の小児外科医Dr. Nuss が発表した術式で、pectus bar(金属バー)により胸郭を内側から固定する方法です。2000年頃から日本でも広く行われるようになった手術手技です。
当院では陥凹の高度な症例を除いて全例Nuss法を施行しています。陥凹が高度な症例については、Nuss法以前に行われていた胸骨拳上術にNuss法を組み合わせた治療を行っています。 我々呼吸器外科医は、体表から胸腔内に至る全ての胸部操作を専門としているため、胸腔鏡操作、縦隔内のアプローチ、術後管理まで万全の体制で診療を行う事が可能です。バーを1-2本挿入する通常の漏斗胸手術の場合、手術時間は1-2時間程度、術後5-7日程度の入院期間となっています。
当科では胸腔鏡を用いた安全で質の高い手術手技を確立しています。
全身麻酔で手術を行います。一人ひとりの患者さんの胸骨陥凹に合わせてチタンバーを曲げ、凹んだ胸を持ち上げるように胸骨の下に留置します。このチタンバーは最低2年間体内に留置します。手術時間は1-2時間程度です。
加えて、我々慶應大学呼吸器外科では成人の高度漏斗胸による重篤な呼吸不全を呈する患者さんや、高齢で治療の適応がないといわれた患者さんなど困難症例にも積極的に治療を行っております。大学病院の特性を生かし、困難症例については小児外科、心臓外科、麻酔科、形成外科、精神神経科など他科と協力して、最適な治療を行いますのでいつでもご相談ください。
当院で手術を受けていただいた患者をご紹介します。
10歳台男性。胸骨下端の陥凹が気になり手術を希望され当院を受診しました。Nuss法(チタンバー1本挿入)し、術後4日で元気に退院しました。
20歳台男性。労作時の易疲労感を認め、当院を受診しました。当院でNuss法(金属チタンバー2本)を行いました。術後6日間で退院となり現在外来で通院中です。
70歳台男性。労作時の呼吸困難を認めていました。他院では治療困難と言われ、当院を受診しました。当院でラビッチ法(胸骨拳上法)とナス法を組み合わせた治療を行いました。現在元気に外来通院しています。
当院ではこのように40歳以上の漏斗胸患者さんに対しても治療の必要があれば積極的に手術を行っています。
漏斗胸手術を行う事で画像上も胸骨の陥凹の改善や、心臓の偏移が改善するなど外見だけではなく、心肺機能の改善もみられます。
胸腔内を観察するとバー挿入前には胸骨の陥凹により心臓が背側に圧排していますが、Nuss法を行い、バーを挿入した後では心臓の圧迫が解除されていることがわかります。
当院での治療経過をいくつかご覧いただきましたが、漏斗胸手術は外見の改善はもちろん、心肺機能の改善にも期待できる治療法です。 慶應呼吸器外科では胸腔鏡を用いた安全で質の高い手術手技を確立しておりますので漏斗胸に関してお悩みの方は、ぜひ当院漏斗胸外来の受診をおすすめします。
当科では患者さんのこえを受け止めながら診療を行うよう心がけています。
以下もご覧ください。
通常のNuss法手術には総額で120万円程度の医療費がかかります。そこから実際に自己負担となる費用は入院時の食事代や部屋代などを加え40万円前後となります。
18歳以上の方については「高額療養費制度」の限度額申請を行えば、収入によっても異なりますが上限額を超えた場合、その超えた額が支給されます。詳しくは外来受診時にご相談ください。
毎週火曜 午後 要予約担当 政井恭兵
外来予約センター 電話:03-3353-1257[平日・土曜日(第2・4・5)]
電話受付時間 9:00~16:00 紹介状・画像データ受付時間 8:40~17:00
できましたら受診日2日前までに外来予約センターにお持ちいただくかご郵送ください。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | |
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午前 | 朝倉 啓介 | 淺村 尚生 | 加勢田 馨 | 菱田 智之 | 淺村 尚生 | 交代制 (第2,4,5) |
政井 恭兵 | ||||||
午後 | 朝倉 啓介 | 政井 恭兵 (漏斗胸) |
加勢田 馨 | 菱田 智之 | 交代制 (第2,4,5) |
慶應義塾大学病院 呼吸器外科
(医局直通)
電話:03-5363-3806
FAX:03-5363-3499
相談から治療まで、漏斗胸に関してお悩みの方は、漏斗胸外来の受診をおすすめします。